「書体の誕生」展示と講演に行ってきました。
内容にあやふやなところがあるかもしれませんが行ってきた記録として残しておきます。
「書体の誕生」展示と講演では筑紫書体を作られている藤田重信さんが講演されるとのことですぐに応募しました。
藤田さんといえば先日「プロフェッショナル仕事の流儀」で特集されたのが記憶に新しいです。
・藤田重信(2016年6月13日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
本日は藤田さんと、ブックデザイナーの坂野公一さんを交えて、書体についてのトークでした。
筑紫明朝はなぜ魅力的なのか
近年のポスターやパッケージデザインに少し気をつけてみてみると筑紫書体があらゆるところに使われているのがわかります。筑紫書体は大人気なフォントなのです。
今朝の私鉄改札口付近ポスター。
— 藤田重信 (@Tsukushi55) 2017年4月4日
「筑紫アンティーク明朝」
「筑紫明朝」
「筑紫B丸ゴシック」
「カラット」と自分で手がけた書体が並ぶのは心地よいです。ありがとうございます。 pic.twitter.com/AFWNeXCyuI
まずは明朝体と楷書体の比較。
明朝体
・四角の箱の中にぎっちりつまっている字形
・文明開化 明治以降の洗練されたイメージ
楷書体
・手書きのように流れる、枠を感じない字形
・江戸時代以前のイメージ
などがあげられます。
筑紫明朝は明朝体の厳格なルールにとらわれ過ぎず、人の手で書かれたような愛嬌がありつつも楷書体とまではいかない。明朝体と楷書体の間を行くような存在なのだと。
藤田さんの作る書体は有名な書体デザイナーから「文字が暴れている」と、いい意味でも悪い意味でも(?)評価されました。他にも多くのデザイナーからも「今までこんなフォントはなかった、是非使いたい!」と積極的に使い始められ今に至るのだと思います。
デジタルな時代だからこそ、筑紫書体や、印字のにじみを再現したA1明朝など、アナログ感を感じられるフォントが人気になるのは納得です。
曲線へのこだわり
筑紫書体のなにが魅力を引き立てているかというと、その曲線です。
藤田さんの曲線に対する執着心には並々ならぬものを感じます。
少年時代のエピソードと共に話されていました。
引用(左):チェンマイと神戸・須磨を往ったり来たり -初代カローラを見つけた
引用(右):歴代カローラのナンバーワンはどのモデルか ( 自動車 ) - オフミのカーデザイン談義 - Yahoo!ブログ
小さい頃に見た2代目カローラ(右)の背面の流線型。その曲線に惚れ込み、親が車を買う時にどうしても2代目がいい!と懇願したのにも関わらず、1代目の四角いカローラを買うことになってしまった。それがどうしても忘れられなかったといいます。
筑紫明朝を見ると、ハネに特徴があります。
ヒラギノ明朝や小塚明朝は二段階の直角なハネに対して、筑紫明朝のハネは一度筆の力を入れ直したかのような三段階の曲線の動きがあります。このなめらかなでやわらかさのある曲線のハネが2代目カローラに影響を受けているのでしょうか。
もう一つ、こちらも小さい頃になかなか捕まえることのできなかったクマゼミ。クマゼミ捕まえた!と思って先輩に見せたらミンミンゼミだということが判明し落ち込んだあの日。あこがれのクマゼミのフォルム。これが筑紫明朝の「り」の形にピッタリはまるのだとか。
筑紫明朝の「り」をクマゼミに重ねてみました。どうでしょう?
セミの画像 引用:クマゼミ
ある種コンプレックスのような少年時代の体験が、大人になってフォントの形に反映されるとは誰が思ったでしょうか。
デザイナーはデザインだけを見ているのではいけない。いろんな体験をすることがデザインにつながるのだ、デスクから離れて外に出よう!という教訓ですね。
藤田さんはTwitterで製作中のフォントの途中経過をたまにアップしておられるので、フォントに興味ある方はフォローおすすめです。
僕はそうやって藤田さんのTwitterを眺めているうちに藤田さんの飼っている猫のファンになってしまった一人です。
お疲れ様です。 pic.twitter.com/YN9ZmPksNM
— 藤田重信 (@Tsukushi55) 2017年4月5日
さいごに
来場された方は全体的に紙媒体を仕事にしている人が多く、Web系の人間は少なかったです。いつも行くようなWeb系のセミナーよりも講演の方法もよりアナログで、人間味のあるというか、いい雰囲気が漂っていたと思います。お客さんも、主催の宮地さんもなんだか全体的に雰囲気がやわらかかったです。
Webをやっていると行き着かないレイアウトや文字詰め、そしていろんなフォントの数々を見れたのが楽しかったです。会場に来られていたみなさんは、ほんとにフォントが大好きで、ちょっとのスタイルの違いで様々なフォントを判別できる強者ばかりでした。僕は参加しませんでしたが、フォントかるた大会、すさまじかったです。
ほかにも坂野公一さんのブックデザインの話、フォントかるた大会、関口浩之さんのWebフォントの話など盛りだくさんで、いつも使わないツボを刺激されたような一日でした。
Web界隈の人間ですが、またこういうイベントに参加したいと思います。
おまけ。フォントに興味のある方は、まずはこの本がおすすめです。